まちづくりの新語・包括連携協定を地方創生的に調べてみた

まちづくり勝手に研究

 

最近、なんとなく目にするようになったニュースのひとつに、「包括連携協定を結びました!」というものがあって、それってなんだろう?と調査をしてみました。なんとなくうさんくささを感じたわけですが、その裏には必ず「PR不足」というキーワードが隠れています。今回はこのキーワードから見えてくる「まちづくりの不足したもの」を、独自視点で勝手に考えてみます。

<調査>
日経新聞系の過去1年間(2016年9月~2017年9月)のキーワードヒット数は300件ちょっと。直近約4か月(2017年6月1日~9月27日)に絞ると130件と、最近急増しているような気がする数字です。重複するもの、テーマと外れるものを除いて90件が調査対象に。

記事の分析から、大きく分けて以下の5種類の包括連携協定があることがわかりました。

・産官連携:一番経済を生む即効性のあると思われるもの
・産産連携:単なる企業提携だが、地方創生色あるものに
・産学連携:企業の特定分野をさらに学術的に高める系
・官学連携:一番金になるのに時間を要すると思われるもの
・産官学連携:理想形だが広域的になりがち

わたしの頭の中では、「地方都市と企業が特定分野で提携」というイメージだったのですが、この中で一番多かったのは、わたしのイメージ通りの産官連携でした。

さて、経済的に成果を期待できる産官連携についてフォーカスしてみると、、、銀行とその他金融が圧倒的多数でこの「包括連携協定」を使っていることに気付きます。

報道ほどインパクトが足りない銀行の包括連携協定
銀行の「包括連携協定」は、記事を複数見ていると、「働き方改革推進で連携」という文言が目立ちます。

<傾向1:移住者向けの金利優遇策みたいなかんじ>
7月12日に掲載された北都銀行と秋田県横手市の包括連携協定の記事では、移住予定者の住宅ローン手数料の半額化をうたっています(資料21-1)。

横手市での人口動態を見てみると、流入出データがないので推定が難しくなりますが、たとえば過去5年で世帯数ベースで増加した平成25年度をみてみると、世帯増加は65世帯。この半分が持ち家を購入したとしても、、、、手数料優遇は30万円ちょっとです。

横手市の過去5年の人口動態データ(資料21-2)

(年度)   (世帯数)(増加分)
————————————
平成24年度  34,404
平成25年度  34,469  (+65)
平成26年度  34,450
平成27年度  34,394
平成28年度  34,376

<傾向2:地域貢献をテーマに融資先開拓みたいなかんじ>
みなと銀行と兵庫県小野市のケースは、地域ごとのニーズとその貢献により融資を実施し、その金利収入の一部を小野市に寄付し、ヒト型ロボット「ペッパー」を購入して小学校などに提供する、というもの。融資額10億円、寄付金300万円を目指すそうです。(資料22)

新規融資をすべてこのプランに組み込むだろうけれど、融資額に対する寄付金の割合が3%ということは、全額寄付でもまあ高い金利だな、というのが第一印象な気がします。ちなみに、寄付金には税制優遇が受けられて、その分だけ所得控除になるという経済効果も生まれますね。法人的にはCSRを満たす印象もアピールできます。

<傾向3:働き方改革の具体策にあがりそうなものを啓もうするかんじ>
東邦銀行が福島県労政局と結んだ包括連携協定では、「ダイバーシティ」「ワーク・ライフ・バランス」「女性活躍」「イクボス」のような、働き方改革であげられている具体例を県内企業に啓もうするセミナーや研修会の開催を協働して行っていきましょー、というもの。(資料23)

その後のリリース発表状況をみると、それっぽいセミナー開催のお知らせはなく、、来年度から実施かもしれませんね。

◆報道発表をしっかりとしているが、経過はもちろんのこと、効果がみえにくい
3つの傾向は、今までやってきたこと、今やってることにちょっと後押しする要素を加えただけ、という共通項があります。正直、「こんなことで報道に乗るのね」というようなことが多く、調べを進めると興ざめするようなことも。。しかし、個別の施策としては至極全うで、何かをやろう、という意思をもって動く姿勢は称賛されるべきことばかりです。報道結果に視点をおけば、興ざめしてしまうのは一理ありますが、そこは目的ではないはずだ、ということにも気づきました。

◆わずかな報道から見えた包括連携協定のいじりポイントとは(まとめ)
これらが主とするべき成果とは何か、を考えると、報道成果ではなく、以下のような項目が重要なことになります。

1.包括連携協定で具体化されたサービス利用者が利益を得ること
2.協定でリストされたことを「うちでもやってみよう」という動きにつながること

どちらかというと、2のほうが重要かもしれません。

プログラムにおいて誰がもっとも利益を得るのかを、はっきりとさせて、実施にこぎつけることが大事ですね。さらにほとんどの項目が全国でこつことと実施されていることばかりですので、とりくみを改めてアピールするメディアミックスを複数つなげることで、「自分たちもそれやってたよな、この角度からのアプローチだとさらに面白くなるからやってみよう」というものにつなげていける情報発信などができれば、とりくみが見える化してくるようにも思います。

ゆえに、締結時のリリースはしっかり出されているのですから、アニュアルレポートなどで事後報告もまとめてもらって同じくリリースしてもらえればな、と惜しい気がしました。

 

(資料21) 北都銀行報道発表資料 横手市の地方創生への取組み(子育て応援・移住促進)をサポート~住宅金融支援機構との連携した取組み~(2017/7/11) https://www.hokutobank.co.jp/news/pdf/20170711-2.pdf
(資料21-2) 横手市の人口(平成28年度以前):横手市の過去5年の人口動態データ 指定されたページ、またはファイルは見つかりませんでした。|横手市公式サイト横手市公式サイトwww.city.yokote.lg.jp
(資料22) 小野市とみなと銀行との包括連携協定締結について(2017/6/5) http://www.minatobk.co.jp/topics/news/file/974/topics20170605.pdf
(資料23) 東邦銀行と福島労働局との包括連携協定の締結について(2017/7/20) http://www.tohobank.co.jp/news/20170720_005074.htmlwww.tohobank.co.jp
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