ストラテジックコミュニケーション(戦略PR)の土台となる経営戦略群

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ストラテジックコミュニケーション(戦略PR)は、情報を効果的にターゲットに届けるために、実行計画を立てて行います。その計画のもとになる考え方は、経営方針に沿って達成したいゴールを目指すのが妥当で、経営戦略に沿ってコミュニケーションのあり方をまとめます。

経営戦略は、その組織・会社が経営ビジョンをもとに何をどうしたいのかを具体的に実行するためのプランです。かかわる人が増えてくると、その戦略も細かく規定される、あるいは計画されていき、「財務戦略」や「情報戦略」というようなテーマ別の戦略が設定されるものです。

情報発信も、このテーマ別戦略としてまとめられるべきであり、ストラテジックコミュニケーションにおいては一般的にそれを「コミュニケーション戦略」と呼びます。経営戦略とその他テーマ別戦略の関係図は、以下のようなものでしょうか。

コミュニケーション戦略は、経営戦略を実現するための戦略であり、かつ、ほかの戦略をカバーするものでなければなりません。

たとえば財務戦略でM&Aを積極的に推進する、とした場合、買収をしかけるときに世間がマイナスイメージをもたないコミュニケーション戦術を構築し、財務部門と連携を図るようにします。

たとえば情報戦略で、イントラネットの整備をする場合、ナレッジ共有においてしくみづくりの提案書を作成したり、その後の運営体制についてイニシアチブを取る、というようなことを行います。

テーマ別戦略は、経営戦略をパート別に具体化したものであるため、当然コミュニケーション戦略でカバーしなければなりません。同時にほかの戦略もコミュニケーション戦略をカバーしなければ意味がありません。テーマが細分化され、戦略が増えれば増えるほど、やることがはっきりしてくるので、プラン構築はやりやすくなります。

パブリックリレーションズの仕事は、各戦略担当者との密な連携を構築すること

となると、パブリックリレーションズ担当者は、各パートの戦略担当と連携を図ることが重要な仕事になります。各パートの業務進捗はまったく異なるので、その進捗状況に応じて必要なコミュニケーション戦術をプランし、実行管理をするのです。予定が変われば当然ながら修正を行います。

一般的な企業で通年で発生するイベントなどは、このような感じでしょうか。

これらの情報発信イベントと、その準備や実施期間を加えると、

簡単なものでもこのくらい発生します。

これらはひとつひとつがメディアミックスの形式をとっているので、WEB+パンフレット+対面、というように複数のコミュニケーションメソッドを作っていくことになります。

会社によってはPR部門が制作の企画・ディレクションまでほとんどすべてを担うこともあれば、専門的なことは部署にまかせ、企画段階で予算承認とその後の進捗について定期的にアドバイザリー参加、というように、メディアミックスをパブリックリレーションズが引き受けるかによって組織構成もやり方もまったくかわってくるものです。

ひとつひとつを対処療法的にやらされるのと、このように年間計画に基づいて発信をプランするのって、どっちがいいかは、一目でわかるはずです。

戦略の対等な連携のために問われるCEOの器量と組織が取れる一手

さらっと書いていますが、その他の戦略を作っている人たちは、営業部長や財務担当役員といった、組織の中では上級幹部ばかりです。コミュニケーション戦略の担当者はほかの部門よりも若い人が就くことが多いため、権力ピラミッドの中ではいちばん下になりがちです。戦略を構築できてもいつのまにかこの人たちの下働き、というケースはよくあることです。年間で情報発信をプランし、ディレクションしたほうがいい、と誰の目にも明らかなのにそれができない組織が多すぎるわけは、組織間連携で情報発信部門がほかの部門からマウンティングされてしまい、下働きのような仕事しかやらない状態で終わってしまっていることにあります。

CEOは戦略がそれぞれ対等に連携するよう人間関係にも目を配り、余計なマウンティングをさせないようにしないといけません。経営の真価が問われる、と常に言っている理由は、ここにあります。

コミュニケーション戦略をうまくまわせている組織のパターンは、社長直下にコミュニケーション部門を集約しているか、コミュニケーション部門の部長を専務や常務など、組織ナンバー2,3あたりに任せるケースなどが多いようです。

組織としてお門違いなことをやっていたり、マウンティングが横行するパターンは、組織名を見るだけでもわかってしまったりします

パブリックリレーションズ担当者ができることは編集権と中立性の維持(まとめ)

戦略構築でパブリックリレーションズ担当者がすることは、単に「自分の仕事をする」ことです。しかし、基礎知識を持っていない自称広報の人たちは、「仕事」を「メディア対応」や「プレスリリース」、「広告の企画力」という末節的チャンネルディレクション論に行きます。

戦略構築のためには、圧倒的な量の情報と、ものごとを俯瞰してみることができる経営的視野、それらを構成する想像力が不可欠です。さらに、役員たちから必要な協力を引き出す交渉力は、日頃のコミュニケーションの積み重ねにより生まれるものです。

それらの行動は自信に裏付けられるものがほとんどで、その源泉はパブリックリレーションズ担当者が独自に持つ編集権と中立性です。

このあたりの詳しい説明記事は、以下で書いています。

メディアリレーション力やウエブ管理力もさることながら、戦略をまわせる力量がなければ個別のプロジェクトも意味を成しません。そのあたりの概念図はこちらです。

戦略のやりとりだけでも立場の違う人たちとコミュニケーションを取らなければなりません。この人たちと良好な相互関係を築けるかが、パブリックリレーションズの第一歩になり、この成功がストラテジックコミュニケーションにつながります。

 

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