はじめに

政府・企業・団体といった組織化された集団が、その事業を世の中の人たちに伝え、広めるための手段を日本では広報活動、と呼びます。主な活動はメディアとの関係を作ることにありましたが、広報の原義であるアメリカのパブリックリレーションズは、単なる報道 対応スキルではなく、自分たちの経営方針をいかに情報発信に反映させていくか、という 総合戦略・ストラテジックコミュニケーションという分野に発展しつつあります。

この考え方に立つと、マーケティングや広告・宣伝活動、販促活動はすべて企業活動における1ポーションということになります。それぞれの分野では非常にたくさんのメソッドの積み重ねが行われてきていますが、それにフォーカスしすぎると、企業理念を忘れ、自分たちの都合だけでアクティビティが作られる危険な構図になります。情報発信を経営面から考えることができれば、常にその活動を企業理念、経営戦略に沿ったものかを検証できるので、こういったブレが発生することはまずありません。

情報発信は、単に商品を売るだけではなく、企業の取り組みを理解してもらい、賛同者を得るためにも必要です。投資家や仕入れ先などビジネスパートナーからの圧倒的な支持を得ること、学生からの高い注目は雇用環境を良好に保つために絶対におろそかにできないものです。経営面から情報発信を考え、実践するのは、これらの課題も自動的にカバーすることになります。

情報発信は、組織の規模が小さい時から始めたほうが、後々の成果を得やすい傾向があります。小さいベンチャー企業、団体こそこの考え方を早く導入し、活用すべきだと思います。しかし日本の広報・既存の考え方は、パブリックリレーションズが庶務や営業補助というような枝葉末節目線だと勘違いされており、その部署自体が生産性を伴わない非製造部門だとみなされる間違いが横行しています。お門違いなターゲットに一生懸命情報発信をして、1つか2つのレスポンスを得ても、小さい組織にとっていいことでしょうか。大いなる機会損失です。

プレスリリースをきっかけに、全国紙に記事が載れば、その広告価値は1000万円以上になります。800字程度の作文が、企業のあり方を変えてしまいます。

取り組みを冊子にしたPR誌が行政機関の目に留まり、規制緩和のきっかけを作ったケースもあります。その1冊はそのあとの経済効果を考えると、少なく見積もっても100億円です。

パブリックリレーションズは、規模が大きい会社だけのものではありません。上記にあげた例は小さい会社でおこり、1作家が巻き起こした旋風でもありました。

パブリックリレーションズを、会社の主要事業を支える重要部門として構築することは、決して非生産的ではないのです。

世の中の会社には、社会に役立つためのはっきりしたミッションを持って創業した会社がほとんどです。その思いをことばではっきりさせ、取り組みを詳細に伝えるだけで、社会は大きな理解を示し、応援してくれるようになります。そのしくみを考え、実践するのがパブリックリレーションズです。日本に伝わる広報論はほとんどが遅れたもの、あるいはまちがったものばかりなので、ここではそれらを訂正しながら、本来の近い道や考え方を1からまとめなおしていきたいと思っています。