ハロルド・バーソンの嘆き?

PR101

日本におけるPRパーソンが資格PRプランナーをめざすときに読む「PR概要」の1章パブリックリレーションズの基本のp.4で、PRカンパニーのあるべき姿として、本国アメリカのPRカンパニーバーソンズマーステラ代表の言葉を紹介しています。

それが示すことは、

1.その企業の行動を社会的な第三者的立場から見てどうあるべきかの提言を行っていく
2.組織そのもののあり方のコンサルタントにならなければならない

というようなことにまとめようとしています。ゆえに、バーソンの言葉を以下のように引用しています。

「われわれのクライアント(PR業者の発注者)は初めの頃、”なすべき仕事”は自分ですでに決めていて、われわれPR会社にそれを”いかに社会に説明するか(How to say)”の助言を求めてきたが、次第に”何を社会に話すべきか(What to say)”に変わり、今日では”何をなすべきか(What to do)”の助言を求めるようになった。」(PR概要2018)

現状のPRカンパニーの仕事は、私が観察する限りでは

1.プレスリリース代筆、PR誌の代理編集
2.新商品の報道向け発表会の会場おさえと運営
3.クライシスコミュニケーションにおける会場の仕切りと発表者へのコーディネート

というようなことが非常に多いと思われますし、わたしも仕方なく、片棒を担いだことがあります。

外部から協力できる道は2通りしかない

PRカンパニーの仕事は、まず企業における情報発信業務を一部肩代わりすることから始まり、その成果によって

1.戦略部分に広がるか、
2.業務の一端を担い続けるか、

という流れがあります。

企業側から見てみると、情報発信を戦略的にコントロールする部署は、自社内で持っていなければ意味がありません。自社の情報を全体的に把握するのが自社のPR部門の第一の仕事なので、これはあたりまえです。基本的には外部の人間は「いつまでたっても戦略の中枢は担えない」のがふつうであり、バーソンが言いたいことは、「そこ(戦略策定プロセス)に少しでも近づくべきである」ということなのですが、この本はそこまで指摘していないのが現場感覚のない評論の限界でしょうか。

業務の一端を担い続ける、という道

簡単に言えば、PRメディアミックスにおける何らかの業務パターンを請け負うことに特化することです。先にもあげましたが、

1.プレスリリース代筆、PR誌の代理編集
2.新商品の報道向け発表会の会場おさえと運営
3.クライシスコミュニケーションにおける会場の仕切りと発表者へのコーディネート

といったものが主なものとなります。プレスリリースやPR誌は、最終的には企業が自ら担わなければならないものですが(気取った人はこれをオウンドメディア;owned mediaと呼ぶ)、情報発信の組織を作っていく初期には、代行してもらってもいいとは思います(成果は別として。っていうか、ほとんど成果にはならないと思いますが。コミュニケーション戦略が策定されていない企業の発注は、多くは成果にならない)。

実は、広告代理店が担う、広告の仕切り(新聞・雑誌出稿、メディア露出のための制作作業全般(CM撮影とか、番組制作とか))も、PRメディアミックスでは活用すべきひとつのルートです。ということは、マーケティングにおけるノベルティ制作会社の仕事や、専門的な調査も「業務の一端」であるのです。

戦略部分に広がる、という道は先駆者がいる

経営コンサルタントの戦略コンサルタントがまさにこの分野での先駆者です。MBAないし、中小企業診断士が持っている経営分析のロジックを活用して、経営者に「これじゃいけません!」「●●が足りません!」と迫り、改善提案を行い、その実行を主導します。

つまり、戦略系経営コンサルタントが、PRコンサルタントにとってはライバルとなります。彼らは経営戦略や財務戦略、情報戦略におけるプロフェッショナルですが、PRコンサルタントは情報戦略とコミュニケーション戦略のプロフェッショナルとして、ある程度のすみわけとブッキングがありますね。

ただし、企業のほとんどが、コミュニケーション戦略ってなあに?というところで、かつ情報発信は庶務のひとつと誤認識しているので、競争になると戦略コンサルタントに軍配があがります。

ハロルド・バーソンの嘆き?

PRカンパニーは、戦略系になるのが筋、というバーソンの言い分(?)は、たしかに妥当です。経営戦略にのっとった行動をしなければ、大半の情報発信は無駄に終わるからです。ところが現状お金になるのは、何らかの作業に特化した業務を受注するPRカンパニーであり、戦略策定では経営コンサルタントの後塵を拝してしまっています。

結局、この国では経営者が「情報発信はすごく大事な戦略である」ということを理解しないとPRカンパニーが本来あるべき姿にはいつまでたってもなれない現実があるのです。つまりは、PRの仕事をする場合、この葛藤と常に戦い続ける十字架を背負うことになります。

強いてあげるなら、PRを担う人たちの「真の敵」は、いまここで明らかにしています。すなわち、情報発信におけるコミュニケーション戦略とはどういうものかを、経営者たちに示し続けて学習させることです。たとえ端っこの仕事(という名の作業)を担っていたとしても、戦略とはどういうものかを例示することができれば、いつかわかってくれてそれっぽい仕事が舞い込んでくるかもしれません。

Good Luck。