自分と会社をみてみよう:パブリックとは

パブリックリレーションズ定義補足

パブリックの基本とは、自分と他人の結びつき、という1対1の基本単位からスタートします。パブリックリレーションズを行う自分がまずはじめに出会う「社会」は、自分が所属する「会社」です。

パブリックリレーションズにおける会社とは、なんでしょうか。

ひとつ分かることは、自分はこの会社のパブリックリレーションズをしなければならない、ということ。この変えようのない条件は、会社と自分の関係で「まず会社を理解する」という明確な課題を与えてくれます。しかし、その理解のしかたは、ほかの従業員とは別の視点、特に第三者の視点を常に忘れないという前提での理解のしかたが求められます。

表裏において会社を理解すること

自分の会社が何をやっているかを具体的に説明できる人は多いと思いますが、それを知りたい人の予備知識のレベルに合わせて的確な説明ができる人は、ほとんどいません。たとえば航空会社の人が、自分たちの仕事の内容を、以下の人たちに説明するには、どうするでしょうか?

 A)パイロット
 B)学校の先生
 C)自分の子供

それぞれに説明するレベルが違うと思います。同じように、会社のことを外部の人たちに説明するには、社内の同僚の視点で会社を理解するだけではなく、外の人たちが知りたい内容をも汲み取って会社というものを理解しなければならない難しさがあります。これらを「人・モノ・金」と、大きく3つに分けてみます。それぞれの理解の意味と、その視点の持ち方を書いてみます。

その1・人:どんな人がいるか

1)対外的におさえておくべき「社内人」

会社概要では当然社長以下役員の名前は、その人となり(プロフィール)を含めて知っていなければならないことになります。話題性という点では特殊技能を持った人などをおさえておくことも重要でしょう。特に有名なスポーツチームを持っているところなどは、その選手の把握などは当然ですね。

2)情報網としての「社内人」

どんな人たちが会社を支えているのか。社外に知れることはないかもしれないですが、それぞれの部署やポジションで働く人たちの情熱や知識に触れることは、外部に伝える材料を探す上で重要な要素になります。また、会社の中での動きをいちはやく把握することもパブリックリレーションズの担当者には大事なことになります。

  ・部署におけるキーマン
  ・業務におけるキーマン
  ・ソーシャルにおけるキーマン

といった分野のキーマンから、いろいろなことを教えてもらうことができるようになれば、話題のオプションをより多く持つことができます。

ひとつの職種・担当となって仕事をした場合、その部署に精通する一方、外部からの目を気にしなくなったり、他の部署の理解が浅くなったりするものです。どこかの担当を経てパブリックリレーションズを任される人は、自分の知識を横において、客観的に他の部署とのコミュニケーションを1から取り直すつもりで望むことをオススメしたいですね。これをすると、会社の知識を中立に保つことができるでしょう。

3)当然理解しておくべき人材・社長

会社はなんだかんだ言っても社長を頂点とした「タテ社会」であるため、会社の方向性は頂点の人の考え方こそが唯一の羅針盤です(注:ティール型組織を基とするPR5.0モデルはそうではないかもしれない)。そのため、会社の活動を伝えるパブリックリレーションズ担当者は、基本的に社長のマインドと、そのマインドをシンクロさせていなければなりません(詳細は専門項目にて)。何らかのテーマや身近な上司の言葉にのっとっていつも仕事をしていると、いつのまにか会社が伝えるべき内容から大きく道をはずしていることもあるので、常にトップマネジメントがどう考えているのかを職掌や階級に関係なく確認する必要があります。

パブリックリレーションズを行ううえで、最大の障壁になるのも社長です。この人が情報発信の重要性を理解していなければ、ことごとくあなたの取り組みは踏みにじられることも知っておく必要があるかもしれません。その場合、パブリックリレーションズは隠ぺい、パワハラ、企業不正などマイナス方向に振れる危険度が増します。情報発信に対してどのような考え方なのか、その環境をしっかりと提供してくれるのかを早いうちに見定め、不可能であると判断したら躊躇なく転職することを推奨します。

その2・モノ:どんなものを扱っているか

ひとことで言えば「業務内容」ですが、わからない人にもわかりやすく伝えることができるかどうかが一番重要であり、特定のテーマや技術に精通していればいい、ということにはならないのがパブリックリレーションズにおけるポイントです。

よく、「外部の人たちに自社のサービスをちゃんと伝えるには、その実務をある程度経験しなければできない」という考えを持つ広報担当者や経営者の話を聞きますが、それは根本的に間違っています。

知ってもらいたい人にまず伝える技術は、意外にもメッセージをシンプルにして受け手の「つかみ」をまずしっかりと取る技術が重要です。いわば「情報のツボ」をいかにうまく披露できるか、というところに視点をあわせないと、企業の情報発信はマスターベーション化するためです。「つかみ」をしっかりと取った上で、さらに細かい説明が必要ならば社内の専門家に解説を手伝ってもらえばいいし、企業ブランドのイメージだけを印象付けたければ、何らかのビジュアルによって画一化させる、ということになります。これらの考え方を前提にして、おさえておく「モノ」の情報とは、以下のとおり。

0.会社概要・理念・歴史
会社四季報などで語られている末端的な「業務範囲」の羅列は当然知っておくべき内容。そして、会社ができた理由を必ず抑えることです。何らかのニーズが会社設立ではあったはずです。このルーツをたどりながらどんな業務が生まれ、発展してきたかを抑えておくと、意外と会社の伝えたいことにブレが生じないばかりか、知っておくべき業務知識を非常に効率よく抑えることができます。

1.自社の顧客が知りたいことを、知っていること
「わからない側に立つ」ことで見えてくる、会社の業務に対する疑問点というものが必ずあります。パブリックリレーションズはその疑問点にまず確実に答えることが重要です。「この人はわかりやすく説明してくれる」と思ってもらわないと、伝えたい細かいことすら聞いてもらえないのです。だからパブリックリレーションズにおけるコミュニケーションでは、専門的な技術は二の次で、まずは「わからない側」が求める情報に的確に答えられるようがんばってみるのです。難しいことになったら、その部署のエキスパートに出て説明してもらえば良いのですから(そのほうが社内的に相手を立てることにもつながりますし)。

2.常に初心者のマインドを崩さない
自社の商品やサービスを紹介する上で気をつけるべきは、専門用語をなるべく使わないことです。専門用語は特定の知識の説明を省略する意味あいもあるため、それを知らない人にとってはちんぷんかんぷん。特定の技術やサービスには何らかの理念が含まれていて、その起承転結を披露したほうがよっぽど理解されます。このストーリーを把握することです。

3.担当者の言っていることを信じるときはカウンターパートを把握する
商品やサービスの知識はその担当者が一番知っています。しかし、自社のサービスや商品がパブリックから期待したとおりに評価されなければ、それらの知識は受け入れられません。「いい」と思っていることに対して「悪い」という仮説を立て、それを打ち消す論拠を用意しておくことは、情報のウラを取る行動と同一であると同時に、外部の人たちからの問い合わせに対する想定問答にもなり、かつ自社の商品やサービスの知識の理解を含める「伏線」としての知識になります。

一番いけないのは、現場担当者と考え方や知識を同化させてしまうことです。特定の方向からしか情報を見なくなるので、その伝える内容に公平さを欠くことになり、多面的に伝えられる情報の可能性が狭められてしまいます。これが、会社の直接の担当者と大きく違う「中立性維持」の真髄なのですね。

金:財務状況はどんなかんじか

サラリーマンとして一番欠落する意識と知識ですが、資本主義上は一番重要な情報です。
2つのルートで内容を把握する必要があります。

1.どうやってこの会社はお金を稼いでいるか
要はビジネスモデルを理解することです。何を売って稼いでいるのか、ということからさかのぼり、その稼ぐモデルはどういった設計図にのっとって作られているか、ということを把握します。理解を早めるには、ビジネスモデルのおいたちやルーツを知るといいでしょう。これは「モノ」を理解する過程で同時に学べることでもありますが、資本主義の世界の中では、このビジネスモデルこそが重要であり、実際の技術や商品内容とはまったく違う価値を持っていることを認識しておく必要があります。

2.会社の財務の傾向はどうか
企業会計は10社あれば10社とも処理方法が違います。自分の所属する会社は何を重視しているのかを知りましょう。たとえば、売上高至上主義の会社か、純利益至上主義の会社か、という傾向の差のように。また基本的に決算情報を把握することは当然ですが、決算書を自分で作るほどの知識まで踏み込むのは「ミイラ取りがミイラ」の理論になり、主旨がズレます。あくまでも企業財務を知りたい人の視点でおさえておくべき財務データとその傾向をつかむことがまず求められます。

手っ取り早い方法は、自分が投資家になってどこかの株式を購入することでしょう。そうすると投資家としてどんな情報がほしいかを自分で研究しますしね。

仕事を知る一般的なプロセスをフォローするだけでよい

ここまで書いてきたことは、どこの会社の新人研修でも知ることのできる内容であり、日々のコミュニケーションで気を付けるポイントであり、業務進行上のおさえるべきツボであることに気が付いた人は多いと思います。パブリックリレーションズはコミュニケーション論のひとつにすぎないので、みなさんが日々やっていることをどこに視点移動するか、ということだけなのです。

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