コミュニケーション方法論の勘違い(パブリックリレーションズ定義補足)

パブリックリレーションズ定義補足

コミュニケーション論を探ると、相手にあわせたチャンネルの設定が必要で、わたしたちはできるだけ多くの選択肢を備え、どのチャンネルが一番有効かを探ることが重要だとの認識に落ち着きます。つまり、なるべく多くの情報発信メソッドを理解し、できれば何件かを使いこなせるようになっているといい、いうことです。

しかし、パブリックリレーションズの定義の、「組織とそのパブリックたちの間に相互に有益な関係を構築する戦略的なコミュニケーションプロセス」を着実に実行するには、経営者目線から情報発信を構築するほうが企業活動の諸問題を解消し、有効に機能することがわかってきました。しかしこの国のパブリックリレーションズのほとんどは、枝葉末節目線が横行しており、同じテーマでも発信内容が全く違う方向に突っ走る危険性をはらんでいます。

経営者目線でなく枝葉末節論におちつく間違いが横行している

取り扱う商品・サービスから企業の情報発信ニーズをパブリックリレーションズとしてまとめていくと、特定のチャンネルに特化したものができあがる傾向があります。
これは採用募集記事などに以下のようなパターンで如実に表れます。

・販促部門の仕事内容の羅列
・マーケティングとパブリックリレーションズの混同
・アピールと混同した営業職

企業の理念や事業計画よりも、目先のニーズを優先すると、どうしてもこうなってしまうのは致し方無いものではあります。ですが、これらに羅列されている「調査」や「プレスリリース」などパブリックリレーションズの本来の業務が企業戦略ベースではなく、「目先の営業ツール程度の認識」から作られるものである場合、発信がお門違いなところに行く危険性が高まります。

商品主義は理念を失う

枝葉末節目線がなぜ危険か、というと、商品を売るために理念などなくなってしまうからです。よくあるパターンを列挙してみます。

★ケース1:高級品路線なのに値引き交渉に負けて価格戦略に路線変更

一定のブランド価値を構築したはずなのに、それを理解しない顧客の強力な値引き交渉に押され、度を越した値引きで商品を売ってしまうパターン。営業担当者が理念を理解していないとよくおこる傾向です。

★ケース2:「顧客に寄り添う」を悪用する販売手法に

結局は自分たちの商品の特性を相手におしつけ、いつのまにかニーズを無視して販売してしまうパターン。不動産開発や化粧品など、高級品に多い傾向でしょうか。

★ケース3:理想を追うばかりで別のパブリックの意見を受け入れなくなる

今までと逆で理念追及がすぎるケースです。「●●者支援」など社会貢献系のNPOなどによくあるパターンで、特定の課題をフォーカスしすぎるあまり別のパブリックの意見を聞かない、あるいは接点を持たなくなるケースです。これでは視野は狭くなりますし、幅広い支援など望むべくもないです。

しかし、完全一致はありえない

ビジネスにおいては、結局は自分たちの都合を買ってもらうことになるため、パブリックとどのレベルで妥協点をお互いに見いだせるか、ということにもなります。フィードバックを受け付けたとしても、発信者が受付可能なときにしか門戸を開かないことも多々ありますし(たとえば受付時間を9時から17時に設定するのは、自分たちの都合)、お互いができることを重ねた結果の合意にしていくことが、コミュニケーションの要点になっていきます。

これを「なるべくお客様寄り」にしていくことで、顧客満足度を高めるのが、ビジネスにおけるリレーションの真実でしょう。この塩梅を調整するのが企業理念やブランドです。どんな思いで商品開発が始まったのか。どんな人たちに使ってほしいのか。それらが明確になれば、度を越した値下げ要求には応じないし、ニーズのすり合わせが最終判断になるでしょうし、どこの部分で少しでも協力してもらいたいという思いを伝えよう、とも思うようになります。

つまり、企業理念や経営戦略から情報発信を設定していくのは、間違った方向に会社が進んでしまう防衛策にもなるのです。商品やサービスからしかものごとを見なくなることは、目先の利益すら取れればよい、という相手のことなど一切考えない会社を作ることになり、それは最終的に倒産や摘発など、社会からしっぺ返しをもらうことになります。

 

コミュニケーションチャンネルに対する、パブリックリレーションズ担当者のあり方とは?

では、コミュニケーションチャンネルをどう使いこなせばよいのか。以下の図は、商品ベース、サービスベースのまちがった考え方にのっとった組織(枝葉末節目線)が犯しがちな構図です。

何らかの特定のチャンネルが先に立ち、全体の発信は考えもしなくなります。たまに思い出したように企業理念をコピー文に入れてみたりする程度でしょう。

では、経営戦略にのっとり、コミュニケーション論から学んだ「いろいろなチャンネルを知っておくほうがいいよね」という結論を活用すると、情報発信はどのようにすればいいのか。以下のような構成になるはずです。

パブリックリレーションズは、異なるパブリックの種類やその時々のミッションに応じて、情報をデザインし、的確な方法論をタイミングよくリリースすることが基本動作となるはずです。つまり、パブリックごと、リレーションの目的ごと(ミッションごと)にそれぞれのやりかたは違うわけであり、となるとパブリックリレーションズにおける方法論は、上のような位置づけになるはずです。

まとめ

コミュニケーション論からパブリックリレーションズのあり方をさぐると、なるべく多くの情報発信チャンネルに精通し、何個かを使いこなせればいいのがわかります。しかし、その発信方針はあくまでも経営戦略にのっとったものでなければ、目先の利益を追求し、パブリックのニーズを無視する危険な情報発信に変質する危険性があります。会社の情報発信がお門違いな方向に行かないようにし、かつチャンネルを使いこなすには、ミッションごとにチャンネル構成を変えていくまとめ方が必要で、そのマネジメント力こそがパブリックリレーションズに求められるスキルといえます。

特定のチャンネルにこだわるあまり、全体の発信を考えなくなる発信は、情報発信に偏りが出るため、行いたくない選択肢です。ところが世の中のパブリックリレーションズの認識は、「報道対応ができればいい」「マーケティングができればいい」というような偏ったものが多いのが、とても気になります。コミュニケーション論を改めて見直し、パブリックリレーションズの定義を知り、その有効活用が経営にのっとったものである合理性に早く気付いてもらいたい、と願うばかりです。

 

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