マーケティングは、パブリックリレーションズの1形態

身近なものから知るパブリックリレーションズ

最近、「マーケティング」という組織が増えてきました。ルーツは1905年の文献にまでさかのぼります。そして巷にはこの方法論を解説する本がたくさん出て、どれを取ればいいか迷ってしまいますが、それだけ企業ニーズに直結している(=わかりやすい)ことを意味します。

 

マーケティングの本質は経営学の祖、ピータードラッカー博士が語る「マーケティングとは、営業活動をゼロにすること」にあります。その手法としてマーケティングリサーチ論(各種調査法)、市場分析(PEST、5F、3C、SWOTなど)、戦略理論(だいたいポーター理論、コトラー論)、戦術論(いわゆるSTP、4Pなど)と、無限の拡大をしていますが、日本マーケティング協会が定める定義が、ひとまず知っておくべき概念である、と思います。

マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。 by日本マーケティング協会 1990年

パブリックリレーションズとの違いは、市場創造という特定の目的が存在することです。パブリックリレーションズは企業理念の浸透のために、「特定の商品で市場開拓するという手段も取るよね?」、という考え方なので、マーケティングはパブリックリレーションズで実施される数ある形態の1つにすぎない、ということになります。

しかし、マーケティングはその企業の「顔」である商品を売って市場開拓することにあるので、情報発信の中では最も重視し、かつ予算が割かれるチャンネルであることは確かです。かつ、目的がはっきりしているので、目標達成のためにあれやこれやと研究し、先にあげたような手法が数え切れないほど開発されて行っているのですね。

 

みんなが言う「マーケティング」の性質

組織の人間が「マーケティング」を語るとき、だいたい以下の方向性を持っていることがわかります。

1)「市場開拓をしよう!」という意味
ターゲットのお客さんは誰かがわかっているが、新しいエリアに進出したいと考えているときに語られること。「大阪で展開していたけど、今度は東京に打って出る!」みたいな感じです。営業戦略に近いですね。

2)「顧客創造をしよう!」という意味
自分たちが売りたいモノで需要を引き起こそう、という、経営として初動の段階で、売るだけでなく理念の浸透や売るための組織・構造づくりもやらなければならない状態。「世のためになるアプリを開発したスタートアップがこれから活動を開始しよう」というような感じです。経営戦略が大きくかかわっていて、ドラッカー博士の言う「顧客創造」にあたります。

3)「打って出る環境がどんなものか調べよう!」という意味
売りたいモノはあるけれど、どんな人たちにウケるのかがわからないので調べたい、か、世の中のニーズはどんなものがあるのか、それを探ったうえで、自分たちができることを模索したい、というもの。いわゆる「マーケティングリサーチ」と呼ばれるものです。

 

パブリックリレーションズで重要なものは、マーケティングリサーチ

コミュニケーション戦略を立案するとき、またはそれぞれの戦術を実行するとき、相手の状況を把握する情報収集は必須となります。そのため、パブリックリレーションズの担当者はマーケティングリサーチの概念を理解していなければならないのですが、多岐にわたる理論が混乱を招くかもしれません。

1)統計学
標本・母数からはじまり、正規分布や標準偏差、各種計算は、リサーチに重要な数値分析を構成するための基礎知識部分です。基本的な概念の理解は必須です。

2)課題発見力
意外に思われるかもしれませんが、そもそもの課題を発見する力も調査力に大きくかかわっており、これは万人が持つ能力ではありません。人から言われたことしかやれない人は課題発見力はゼロです。経済産業省が提唱する社会人基礎力や、経営コンサルタントの面接によく使われるフェルミ推定くらいはできるようになっていると(っていうか、遊びで取り入れるくらいがいい)いいかもしれません。

3)仮説立案とそれを検証する実行力
課題発見力がなければそもそもできないものだと思いますが、課題として得たものが「じゃあ、これなら解決できるのではないか?」「この問題を構成するものは●●なのではないか」という空想を働かせて、課題に取り組む力をいいます。このあたりになってくると、SWOT分析や3C分析などは理解しているといいでしょう。SWOT分析は事業計画書のフォーマットとして採用されていますので、できるようにしておくといいですね。

4)主にセールスプロモーションで活用する市場調査手法
インタビュー(1対1、グループ)、アンケート調査、サンプル調査など、セールスプロモーションで活用される具体的手法は理解しておく必要があります。パブリックリレーションズのキャンペーンの効果分析のほか、プログレスリサーチ(そのキャンペーンの実行プロセスは妥当だったか?を検証する作業)にも活用できます。

5)広告の効果測定法
パブリックリレーションズのキャンペーンを実施して、その結果どうなったかという調査をする手法全般ですが、最近はインターネットのリーチ率やコンバージョン率の集計が最もポピュラーです。

 

知る、調べる、評価する:パブリックリレーションズにとってのマーケティング

マーケティングは市場創造が定義に盛り込まれているので、目的がはっきりしている情報発信です。たいていの企業は主力商品をどう売るか、ということにこの手法を活用していきます。しかし、情報発信を経営戦略に沿って構築するパブリックリレーションズにとって、マーケティングは1部署にしかすぎません。

パブリックリレーションズの現場でも「マーケティング」という言葉はたくさん耳にしますが、その多くは「マーケティングリサーチ」を意味しています。

小規模な会社では、このリサーチ部分と市場創造部分がごちゃまぜになってしまっているケースが多いですが、その原因は単に違いがわかっていないのもあればパブリックリレーションズがわかるなら、マーケティングもできるだろう、やってね、というのもあるかもしれません。

いずれにしてもマーケティングとパブリックリレーションズは階層が違うので分けて考えないといけないものです。
違いを理解したうえで発信を研究しないと、無駄な調査と無駄な発信が数多く生み出されるのは目に見えています。