相互に有益な関係とは:パブリックリレーションズ定義補足

パブリックリレーションズ定義補足

パブリックリレーションズでは、振り向かせたいパブリックとの対話によってお互いを理解
しあうことが重要であり、その関係性を作ることがコミュニケーションのゴールとするキャ
ンペーンが多いです。これはパブリックリレーションズの定義にもりこまれている重要なこ
とで、「相互に有益な関係」がそれにあたります。

パブリックリレーションズの定義を、それに携わる人たちに聞いてみると、ほとんどの人が
「パブリックリレーションズとは、宣伝を通じて・・・」といった具合になんらかのコミュ
ニケーションチャンネルを含めて語ろうとします。PRプランナー試験の浸透でその比率は減
ってきてはいますが、広告やマーケティングあがりの人たちには依然としてこの傾向が続い
ており、非常に残念な気分になります。

「相互に有益な関係」づくりが特定のチャンネルに縛られてしまうと、特定の視点にとどま
る危険性をはらんでいます。これを避けながら、「相互に有益な関係」を作るうえでキーに
なる2つの要素「Awareness」「Win-Winモデル」について、ここでは少し解説します。

特定の視点にとどまる危険性

定義に出てくる「パブリック」とは、対人関係学(インターパーソナルコミュニケーション
)からの発想で、自分と考え方の異なる集団、と具体的に解説していますが、改めて考えて
みると、身近には以下のような関係があることに気づきます。

ワタシ ←→ 部下・同僚
ワタシ ←→ 上司・経営者・社長
パブリックリレーションズの部署 ←→ 他の部署
ワタシが属する会社 ←→ 外部の人
ワタシが属する社会 ←→ 別の社会

対するパブリックの違いによって、「ワタシ」の立つ位置は、たとえば消費者から相談や問
い合わせを受け付ければ、「窓口として会社の側に立って消費者の声を聴くワタシ」から、
会社に対してその要求を伝えるときには「消費者の側に立って声を届けるワタシ」というよ
うに、どこに立つかでスタンスを取り方が変わり、それはかつほぼ同時に起こるようなこと
もたくさんありますね。

消費者

(窓口)

ワタシ

(消費者代表)

ワタシの属する会社

スタンスがころころと変わることは、自分とパブリックとの関係をどう保てばよいか、とい
う悩みが起きるものです(実はこの立場の瞬時変化が現代の働き方のストレスの根本原因な
のだが、これをフォーカスすると話が脱線しすぎるのでここでは触れないでおく)。

パブリックリレーションズの定義を語る段階で、「それは宣伝である」、「マーケティング
である」、と、特定のメソッドやグループを上げる人は、この切り替えが鈍くなっている可
能性があり、ややもすると相手のパブリックのことをおもんばかることができなくなってし
まう危険性と、その1点の視点でしか相手を見ないという危険性をはらんでいます。

特定のグループに所属し、その立場だけで物事を言うことほどラクなことはないです。

相手が傷つこうが笑おうと気にしない。自分たちの主張を繰り返せばよい。しかし、このマ
インドにパブリックリレーションズが終始した場合、相手から本当の意味で私たちを理解し
てくれることは、おそらくないでしょう。

相互に有益な関係

パブリックリレーションズの場では、立場の変化が同時に起こることが多いので、自分の中
でどこに妥協や共感を探せるかということがその人のもつパブリックリレーションズの「能
力」になります。これらを相手と見出したときにはじめて「相互に有益な関係」が成立しま
す。そこに至るまでの過程には、いいところも悪いところも「知っていったプロセス」があ
り、「相互に有益な関係」はつまり、いいところもわるいところも受け入れる、という意味
にもなります。

コミュニケーションを絞り込みすぎることで見失う相互に有益な関係

パブリックリレーションズとは、自己PRだ、広告だ、マーケティングだと、定義の中で特定
のメソッドが出てくる人は、基本的にその技術を中心に物事を考える傾向が見られます。コ
ミュニケーションという言葉はそういった技術をひとつずつリストすることではなく、「そ
れらを使った結果」を指しています。

英語のパブリックリレーションズ定義の原文には「organization」という言葉があり、それ
は「組織」を意味することに加え、コミュニケーションをする上での「構成」を意味します

・調査能力(Research):ニーズをつかむ、専門知識を得るための技術
・計画力(Planning) :情報や知識の送受信における計画力
・対話の多様性(Communications Dialogue) :情報チャンネルの理解力
・実施評価(Evaluation) :PR実施に対して適合性と効果検証を行う技術

これらの構成を体系立てて実施できることが、パブリックリレーションズを実施するコミュ
ニケーションを確立するための基礎技術です。

ちなみにこの4つの段階を踏むには4つ以上のコミュニケーションツールが必要となってく
ることは、簡単に分かると思います。そう、この時点で特定の技術だけでは、パブリックリ
レーションズは成立しないのです。

解説記事:パブリックリレーションズの定義の「構成」を知る
http://pr401.com/?p=207

「構成」を実施するためのビジョン

「構成」を実施するには、

Awareness(知ってもらう)
Win-Win Solution(双方にとって利益となる)

という2つの要素が前提になります。この要素をクリアして「相互に有益な関係」ができる
のです。

パブリックリレーションズは、異なるパブリックと相互に有益な関係をつくることが最終目
的であるので、そのためにはパブリックを知ってもらわないといけませn。マーケティング
の古典的な購買心理フローにAIDMAというアプローチがありますが、AwarenessはこのAIDMA
をすべて包み込んだような概念に近いです。そしてその結果として、相互に有益な関係を意
味するWin-Win Solutionが作られる、というものです。

まとめ

パブリックリレーションズの定義は、最新のPRSAの定義によると、「組織とそのパブリック
たちの間に相互に有益な関係を構築する戦略的なコミュニケーションプロセスである」とし
、その中の相互に有益な関係とは、AwarenessとWin-Winモデルという要素を通じて成立しま
す。ゆえに、パブリックリレーションズのキャンペーンにはAwarenessキャンペーンが非常
に多く、Win-Winの関係に非常に強いこだわりを持ちます。しかし、定義解説で「宣伝」や
「パブリシティ」というような特定のコミュニケーションチャンネルが出てきてしまう残念
な人たちは、視点がそれのみに偏ってしまう傾向があり、相互に有益な関係を築く障壁にな
る可能性があります。定義における構築(構成)にひろげ、コミュニケーションが1つでは
足らないことを解説しながら、その視点をひろげよ、という意味についても触れ、相互に有
益な関係の全体像を書いてみました。

別の記事では、AwarenessとWin-Winモデルについて詳しく書いてみたいと思います。

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