PRプランナー1次試験対策。テキストブックの改定と追加部分の把握

PRプランナー試験

2019-20年度のPRプランナー試験に向けて、テキストブックがマイナーチェンジしています。
この分野に限っては、コミュニケーションの体系化が急速に変化しているので、過去のテキストブックをもとに試験対策を取ることはPR学部出身者でない限り危険です。新しいテキストブックの解析に入る前に、旧版から何が変化したのかを見ることで、今後重視されるテーマがなんであるかを推測していきます。

2019-2020年度版広報・PR概説

新しく出た2019-2020年度版広報・PR概説は、1次試験対応テキストで、パブリックリレーションズの日本における現在の知見について(本場アメリカの知見に遠く及ばないながらも)ほどよくまとまっているものでもあるな、というのが読んでみた感想です。

章建ては以下のようになります。これは1次試験でリストされている出題範囲と一緒です。

第1章:広報・PRの基本
第2章:企業経営と広報・PR
第3章:広報・PR活動のマネジメント
第4章:コミュニケーションの基礎理論
第5章:メディアリレーションズ
第6章:マーケティングの基礎理論
第7章:マーケティングと広報・PR
第8章:ブランドの基礎理論
第9章:CSR(企業の社会的責任)
第10章:インターナル・コミュニケーション
第11章:IR(インベスターリレーションズ)
第12章:グローバル広報
第13章:危機管理広報
第14章:行政・団体等の広報・PR

PRプランナー1次試験:試験項目

PRプランナー資格認定制度/検定試験
公益社団法人 日本パブリックリレーションズ協会主催。広報・PRの基本的な知識から実践的なスキルまでを検定し、資格を認定する制度。

前回テキストブックからの変更ポイント

広報・PR概論から広報・PR概説への変更ポイント。章建てでどのように変化したかを以下にまとめました。

紫部分は、タイトル変更のみ、あるいはテーマ性は同じだが加筆・修正がなされた部分、白い部分はほぼそのままだけど記事内容部分はかなり減らされているもの。グレーは廃止。黄色は新設です。

新設部分3テーマ:マーケティング、CSR、インターナル

まずは新設3テーマについて。

革命的変更を成し遂げたマーケティング分野

PR401として大きく評したいのが、マーケティングのまとめ方が本来ベースの視点で論じられるようになってきたことです。旧テキスト:概論の第7章I. マーケティングと広報・PRの役割では、パブリックリレーションズをマーケティングの下のコミュニケーションと位置付けるともとれる表現がありましたが(「マーケティングにおいて、広報・PR活動はマーケティング・コミュニケーション活動の手法の一つにすぎない」p162萩原)、これは同じく概論の1章・2章で否定されているおかしな状態となっていました(「マーケティング型つまり宣伝活動の一環として~」p23猪狩、「コミュニケーション活動も経営戦略の重要事項に加えられるようになり、人事や財務、研究・開発、設計・生産、マーケティング、物流などの経営機能別戦略に加えて、ヒト、モノ、カネに続く第4の経営資源である情報に関するコミュニケーション戦略を確立し、ステークホルダーの要求やニーズに対応した戦略的な広報・PR活動が求められるようになったのである」p.39猪狩)

本家パブリックリレーションズの国際的テキストブックであるThe Effective Public Relationsは第1章の冒頭でマーケティングとパブリックリレーションズの混同について指摘をしています(邦版だと2003年版ベースの体系パブリックリレーションズp9-12カトリップ)。本家のプラクティショナーでも間違えてしまうテーマなので、難しいところです。

おばかな考え

まっとうな体系図。マーケティングはあくまでもパブリックリレーションズの1ポーションです。これはIR、GR、CSRなどと同じです。

前提が長くなりすぎましたが、これらを踏まえて、テキストブックにどれくらい反映されたのか。

6章、7章の説明スタンスは、あくまでもマーケティング担当者目線

テキストブックの取り扱い量としては、ほぼ倍に近い増量になっています。

青い部分はほぼ同じ。時事的な事例を削除するなどシンプルに、方法論としてのマーケティングの機能を説明する、という内容になり、コンセプト設定の時代的変遷をコトラーの体系化の変化をもとに解説したり、マーケティングコミュニケーション部分におけるPR機能のフィティングについての記述が増えたよ、というような変化がありました。ただし、実務者レベルでこのテキストブックを読むと、マーケティングの説明はマーケティング部署の人たちの基礎知識という視点なので、局地的である、ということです。これをもとに素直に知見を吸収すると、PRの中のマーケティングであるのか、マーケティングの中のPRであるのかという立ち位置を見失う可能性もありそう。

旧式パブリックリレーションズの建前論を撃破

ただ、この改訂版のすばらしいところは、p165にて、(マーケティングにおいてPRが目指す成果は、最終的にはその製品やサービスの売り上げに寄与することである)という文をもって、マーケティングとPRの先にあるストラテジックコミュニケーションの考え方を導入し、それぞれの位置づけを自然と仕分けたことにあると感じています。マーケティングの手法における多くの部分で、派手に目立つのは広告展開ですが、そのコミュニケーションの方向は1方向。自分たちに都合のいい情報発信ということで双方向を基準としたPRとはまったく逆、とみなされ、旧来型広報担当者は、マーケティングを「異世界のもの」と認識しています。しかし、双方向をもって最終的になにを求めるのか、という問いは、この文の通り売り上げアップである真実は揺るぎません。双方向を盾にパーセプション・アウエアネスの獲得はよくわかったけど、じゃあその先はなに?ということです。その真実は企業であれば売上アップであるわけで(政府・団体は活動予算のアップ)、この視点からPRとマーケティングの違い、関わり方を整理するのは、王道ではないですが実務者にとっては、一番わかりやすい入り方なのかもしれないです。

次の時代のPRの基本体系になりかねないCSRの登場

元々は環境問題を端緒に企業の社会性を問うムーブメントが起こり、それが投資判断になったり、就職活動上重要なファクターになったり、ということで、企業の社会的責任とは、という大きなくくり方が世界レベルで急速に体系化されているのがCSRです。

変遷のまとめは重要ですが、CSRの切り口がISOガイドラインからのみ、というところでやや物足りなさを感じます。環境、コンプライアンス、ガバナンスなどとのかかわりについての説明が少し薄いかも。

企業の社会的責任を重視されるので、PR的には企業理念の浸透と決算内容からの経営説明(要は統合報告書の編さん増加の可能性)など詳細化が待たれるところで、まだ概念と歴史の整理程度になってしまっています。

 

消えたエンプロイーリレーションズとインターナルコミュニケーションのゆるさ具合の危険性

インターナルコミュニケーションが導入され、エンプロイーリレーションズが消えてしまいました。

ジョンソンエンドジョンソンのクレド事例を除いてよくわからない事例が増え、メンタルヘルスや労働組合的な対立構造への対処という側面がごっそりと削り取られてしまった感があります。多様性のある働き方を導入する現在の動きとは逆行すると取られかねないチョイスかな、と。

そもそもですが、「インターナルコミュニケーション」とは、「内側へのコミュニケーション」の総称であり、報道発表は宣伝活動などの「エクスターナルコミュニケーション(外側へのコミュニケーション)」と対になっている表現です。インターナルを論じる場合、エンプロイー(労働争議対策、コンプライアンス違反、クライシス発生時の組織内統合コミュニケーションの必要性などなど)や採用広報、コンプライアンスやガバナンスなども論じるべきですが、10章I. インターナルコミュニケーションの戦略的位置づけにリストされた4つのテーマに対する概念的経緯説明に終始している展開となっています。

1.企業理念やビジョンの共有
2.従業員のロイヤルティや一体感の醸成
3.企業文化の継承
4.社内広報誌や社内イベントの意義

このテキストの不思議なところは、一貫して採用広報についてまったく論じられていない点です。ベンチャー企業の多くが採用広報をきっかけにパブリックリレーションズ部門を持つに至る背景をまったく無視している。そのため、同試験をめざすベンチャー企業の採用広報担当者たちは実務上かなり違和感をもって問題文に臨んでいることを多数確認しています。

マイナーチェンジを実務者目線でフィットさせる

全体的には時事ネタの修正と新規に導入するべきテーマの分だけいろいろなものを少しずつ削って整えました、という印象がある今回の改定。しかし実務者目線に沿ってマーケティングの整理が進んだり、CSRが登場したりと、今必要なPRの要素説明は満たしていると思っていいかと。しかし、本家Effective Public Relationsの体系化にはほどとおく、PRプラクティショナーの実務の説明やNPO分野など収益構造や設立構造が違う組織のパブリックリレーションズの体系的説明など、不足点が多々あるのはたしかです。

ゆっくりとマイナーチェンジを見守りながら、改定のたびにどこがよくなっていったのかを取り上げられるようにしたいと思います。

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