パブリックリレーションズは、ステークホルダーとの良好な関係を築くためにある、と思い込んでいる自称広報担当者が多数ですが、それは「候補者」であり、ホルダーではありません。パブリックリレーションズの定義でも、パブリックと書いてあってもステークホルダーという文言はないのです。つまり、パブリックリレーションズはまったくちがう世界の人たちに話しかけることが前提です。ここも多くの広報担当者がまちがえているポイントです。
多様な価値観とのコミュニケーションでは、情報の少しの飾りでも仇となることが多々あります。結局、事実をありのままに語り、公平・公正をこころがける構成にしていかないと、良好な関係構築はできないのです。
では、どのようなところに気を付けなければならないのか。いくつかのTIPSをあげてみたいとおもいます。
自分から評価を押し付ける「残念な形容詞」の存在
店舗モノだとわかりやすいので、例をあげてみます。
「カツ丼のおいしい定食屋」
「小さなお店」
自分たちの商品やサービス、店舗をパブリックリレーションズに載せるとき、自分たちのことを上記のような表現をしているところが相当数ありますが、これはマイナスインパクトでしかありません。「おいしさ」や「小ささ」は第3者の感想であり、それを自分で言ってしまっているのは相手に自分の価値観を押し付けていることを意味します。
店側においしいと言われてそうでなかったらどうなるのか。
店側に小さいと言われたからといって、何もしない何もできないことを許していいのか。
「カツ丼をウリにしてる定食屋」
「10人が座って食べれるお店」
こう修正すると、いかがですか?多様な見方・考え方を、うまく受け入れてしまうのではないでしょうか?
つまらない形容詞を排除し、事実を並べることで、無用の波風を防ぐことは重要です。
天気予報で「雨」をどう伝えるか
一昔前は、雨を「悪い天気」、晴れを「良い天気」と表現していました。しかし雨が作柄をよくする農家にとって、それは「恵みの雨」なので、「悪い天気」というのは、立場の違う一部の人にとっては、よくない表現になるので使わない、という話は有名です。
立場によって感じ方が違う、という典型的な例であり、形容詞の使い方を含め、どのようにひとつの情報を伝えるのがいいのかを知るいい例題です。
なるべく公正・公平になっていく
ブログやSNSで記事を書いたり、SNSでコメントを入れたりするとき、誰かに対して書いているつもりでも、不特定多数の人たちも読む構造になっているため、内容に気をつけないと、まったく反対の意見や見解をもつ人たちからバッシングを受けてしまう、というようなことも起こります。
パブリックリレーションズにおいての情報発信は、とりくみの紹介や新商品の発表が圧倒的に多いので、その主体は事実をなるべく客観的に伝え、相手の判断を待つ(=高評価や記事採用)、というフローになりますが、商品のポイント説明で反対意見の紹介や、事実を証明するデータを併記するなど、読者の視点を中立的に誘導することが多いはず。その場合、表現の有効手段は公平・公正を心がけることになっていきます。
つまらない「無難さ」との違い
思わぬパブリックからのバッシングを気にしすぎると、作る表現は八方美人的になりがち、とよく言われます。これは何を伝えたいのか決まっていない人が必ず起こす問題であり、発信内容がコンセプトに基づいて作られたものであれば、そういうことは起こらないはずです。主張の方向がしっかりとし、事実をなるべく公平・公正に伝えるよう心がけるものは無難とはいわないはずです。
まとめ:感情的なレスポンスを減らす
特定の主張をするにも、反対意見を紹介する、データの裏付けを示すなど、客観的な視点を誘導する内容にまとめ、仮に反論があったとしても理性的に意見を述べてもらうような文章にまとめていくことが、パブリックリレーションズ担当者としては腕の見せ所になります。感情的なレスポンスを誘発しても、建設的な議論に発展するケースはまれです。怒る必要のないものに怒っても後味が悪いだけです。そういう気持ちにさせない発信の仕方は、事実に基づき公正・公平に伝える姿勢を常に維持することになります。「雨」の伝え方を例に、ことなる見解の人たちがひとつの情報を同時に見ても一定の理解を得られる伝え方とはどういうものなのか。情報を発信するときにはとくに気を付けなければいけないことです。
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