社長の理解。情報の交通整理。戦略を練る。パブリックリレーションズの仕事の基本形

PR201

定義を理解したパブリックリレーションズ担当者は、では実際にはどんな仕事を主とするのか、ということになります。

↑いちおう、そもそもの定義とは何か、を記した記事をリストしておきます。

社長の理解があることが前提です

どんなに定義を正しく理解し、メソッドを活用する技術を持ち合わせていても、その環境が不正にまみれていたり、経営トップである社長からの委任・信任がなければ機能はしません。担当者はそういう環境で能力を発揮することはまず不可能で、籍を置く時間数分だけ無駄です。即座に転職しましょう。そういう人に残念ながらPR401はアドバイスすることはできないですし、評価もしません。

大きな試金石は、社長からのプレスリリースオーダーに不具合や未確認要素が認められたとき、その確認や是正を逆に指示することができるか、という編集権の行使が認められるかです。これに逆上され、「とにかく発信しろ!」というような形におさまる場合は、担当者の尊厳を侵害しているので即座にその組織を辞すべきです。

社長は有望な社員を抱えているにもかかわらず、自分の都合だけを押し通して情報発信を担わせている、という心当たりがある場合、即座に修正することです。上記のように表現の自由を侵害しており、このツケは必ず払わされます。

情報発信 の交通整理が主となる

基本的には情報発信をマネジメントすることであり、それぞれの部署や担当者が、主張したいことをターゲットやパブリックに届けるための精度を上げるお手伝いをする、ということになります。

自ら企画し、ディレクションすることは特定分野の発信を除いてなるべくやらないようにすることです。

定義を理解しない多くの自称担当者が陥るのは、
情報発信をプロデュースすることが主となることです。

たしかに、場合によってはプレスリリースや企業広告の企画主導を行う必要がありますし、マネジメントの範疇に入りますが、パブリックリレーションズの担当者がまず取り組むべきは、コミュニケーション戦略にそった情報発信が組織全体で行われているかをチェックし、調整することにあります。プロデュースは必須ですが、主にしてはいけません。

残念な担当者は、プレスリリースから全体の情報発信を考えてしまいます。
残念な担当者は、企業広告から全体の情報発信を考えてしまいます。

これでは末端で自由でフレキシブルな受発信ができなくなります。そもそもコミュニケーション戦略を作る意味がなくなってしまいます。

まずはコミュニケーション戦略をつくる。そのために必要な仕事は膨大である

パブリックリレーションズの仕事としては、まずはコミュニケーション戦略を作ること、になります。そのためには、戦略構築に必要な、以下のテーマをしっかりと調べなければなりません。

・企業理念
・経営計画と現在の業績の状況。過去との比較、未来の展望
・商品・サービスの理解
・各種設定されている戦略の内容(マーケティング、営業、開発、財務など)
・自社の資産価値(ROIなどの指標)
・企業を取り巻く状況(業界としての情勢。法律や経済環境も含め)
・企業を取り巻く状況(競合他社との比較)
・基本的な経営分析フレームを使った自社のポジションの確認

これを1日、2日で資料化することは、ほぼ不可能ですので、日々の仕事としては、以下のことをやらなければならなくなりますね。

・一定サイクルの社内コミュニケーション
・日々の時事情報のキャッチ
・業界に出回る技術やメソッドの最新情報の取得

これを誰もが認める形で実現する手段があります。
社内報を作ることです。
活発な組織、業績の好調な企業の共通点は、組織内に情報機関を持っていることです。イントラでも、紙でもチャンネルは問いません。社員同士のコミュニケーション手段があるなら、それを定期的、不定期的にまとめるだけでも違います。取材を理由に組織内の人にインタビューがしやすくなります。

専門的な知識はあらかじめ必要なのか?

これは議論の余地があるテーマです。情報発信は、定義の理解と、コミュニケーション構造の理解がなされていれば、どんな業種にもすぐに活用できますが、高度なものになればなるほど専門知識のサポートが必要です。

専門知識を持つ人にコミュニケーションのしくみを教えて戦力化する
コミュニケーションのしくみを理解している人に専門家のサポートをつける

のどちらのパターンでも、パブリックリレーションズは即日実施可能です。片方だけはありえません。

理想は専門知識を持っている人がパブリックリレーションズの基礎知識を身につけ、コミュニケーションで成果を出すことですが、基礎知識の習得には相当数の時間がかかるのと、その多くで経営者マインドが問われるので、もともと職人型であるはずの専門知識を有する人たちにとっては、真逆のことをマスターしなければならない重圧もかかってきます。

上記のような理由から、うまくいっているケースは少ないのが実情です。

既存のスペシャリストと組ませる、
あるいはチーム化するというような扱いが必須です。

情報発信を信じてもらえる年齢や風格がある、という現実

貫禄のある人がいるだけで、組織が整う、というようなことはよく聞きます。
パブリックリレーションズにも実はそれがあり、私の体感としては40代前半くらいから「情報の通りが良くなる」という現実があります。

逆に20代前半の女性は専門的な知識や経営情報をふまえた発信で苦労しているのも見ています。社長による発信がベストであることは共通していることです。これらの差異をなくしていくには、問われたことに即座に応えることができるほど下準備を整えることができるか、にかかっています。若い人がナメられ、社長の発信が重宝されるのは、

・全体を知っているか
・難しい判断が必要な発信に即座に決断できるか

ということをこなせているかどうかでしかないはずです。

完璧に答えてもナメてかかってくるのは質問者の資質としての問題でかつ社会問題、という別問題に発展しますが(いわゆる差別の一種に確実に分類できる)、社会においてそういう傾向が発生しているのは、発信する側が何度も質問者を裏切っている歴史がある、ということも知っておくべきでしょう。

まとめ

組織をどう作っていくか、というX理論・Y理論の前提もありますが、パブリックリレーションズの仕事はだいたいこういうものであり、「ライター」「プレスリリース担当」「報道対応担当」「ウエブ担当」「広告デザイン」というような局地的なものではありません(ただし、マーケティング、IR、GR、CSRは、情報発信を特定のテーマに対して特化させた分野なので「●●担当」とはニュアンスが異なります)。X理論型でもY理論型でも、やることは同じです。

企業理念など理解すべき内容は膨大ですが、すべてにおいて「すべてを知る者」になる必要はありません。外部の人たちが何を知りたいか、というニーズに基づいて、「知るべき範囲」を特定し、「それ以上の範囲」は対象とする部署の人たちに登場してもらう、という仕組みを作ることです。

担当分野からパブリックリレーションズを作っていく状況にさらされている人は、コミュニケーション戦略づくりにまずは取り組むことです。時事情報も業界情報もあとまわしで結構です。経営戦略とその会社がなぜ起業したのか、経緯となりたちを研究していくと、「どんな情報を発信しなければいけないか」という大きなテーマを知ることになります。そこから学ぶべきことをリストし、消化していけばいいのです。

しかし、情報発信には「年長者ほど信頼される」「専門的知識をどこまで持つか」という特徴が社会の中には存在します。これらともうまく付き合いながら、自分たちの発信をなるべく理想に近づけることが、パブリックリレーションズ担当者の真の仕事です。

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